よういちは写真を撮るのが好き

今日もよういちはカメラ片手にテクテクと歩く。

川までの距離は、森のトンネルを抜け、そのままテクテク歩くこと40分

途中、鳥たちの白く澄み切った囀りと、新緑の瑠璃色にそよぐ冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んで、今日というなんでもない朝の時間をきちんと楽しくすごす。

実の所、新緑というものがなんなのか、今ひとつ分かっていない。多分これは違う。だけど、よういちは新緑という言葉が気に入っているのだ。


よういちはクロックスをよく履いている。

明るい黄褐色の縫い目が、ソールの外周を取り囲むように装飾された、少しお洒落な黒色クロックス。

地面を力強く踏み込めば、それを追いかけるように、ペコっというリズムが響く。

一歩、二歩、三歩。

ペコ、ペコ、ペコ。へへへっ。

よういちの機嫌なんてこんなもんだ。


よういちはカメラを撮るのが好きだ。

どうしてカメラを撮るのが好きかというと、「ただボタンを押すだけだからなのだろうな」とよういちは思う。

いかにも間抜けな理由だけれど、よういちは本気でそう思っている。

どうしてそう思うのかと尋ねても、気の利いた答えが返ってくるかは、よういち本人にもわからない。

だけどそれでいいのだと思う。

なぜなら、意味のないことだって、よういちにとってとても大切なことだからだ。

「意味のないものがあるから、意味のある物のありがたみに気がつく」ではなく「意味のない物の中に、意味のある物が潜んでいる」とかではない。

きっと意味のないものも、意味のあるものと同じくらいに必要なのだと、よういちは呑気にそう思っている

だから、きっと明日も意味なくクロックスをペコペコ鳴らし、意味もなく地面が拡大されていくだけの動画を眺め、意味なくいろいろなものを綺麗だと感じる。

そんなよういちの日常は、いつも楽しいもので溢れている

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よういち

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